こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クリード 過去の逆襲

マイク・タイソンを思わせる分厚い大胸筋と発達した広背筋、太い首を支える僧帽筋とくっきりと割れた腹筋。まさしく鉄人のごとく鍛え上げられたジョナサン・メジャーズのマッチョは恐るべき存在感を示す。物語は、チャンピオンのまま現役引退した男が過去の亡霊と闘う姿を描く。かつて見捨てた親友が十数年ぶりに社会復帰してきた。アスリートとしての最盛期だけでなく人生まで奪ってしまった。もう忘れていた。なかったことにしていた。それでも良心は痛む。決着をつけられるのは己の拳だけ。底辺で生きるしかなかった男は圧倒的な破壊力と憎しみを武器に元チャンプに、いや格差社会全体にリベンジしようとする。元々 “勝ち組” だった主人公にはないハングリーさ、敵役の方が “eye of the tiger” を持つ皮肉が主人公の苦悩と葛藤に拍車をかける。

アドニスをかばって18年間服役した元アマボクサーのデイムがプロデビューさせろと直談判に来る。アドニスがプロモートする世界戦で挑戦者が負傷、アドニスはデイムを代役に立てる。

デイムはハードパンチと反則技を巧みに使い分けチャンピオンを翻弄、ついにはキャンバスに沈めてしまう。もはやアドニスは新チャンピオンになったデイムをコントロールできない。自らの拳でデイムを止めるしかなく、現役復帰を宣言しトレーニングを始める。このあたり、「ロッキー」シリーズのエッセンスがちりばめられ、スタローンがいなくてもいちいちロッキーの顔が思い浮かぶような巧妙な構成に仕上がっている。そして、むしろ良き家庭人・敏腕実業家として振る舞うイケメンのアドニスよりも、不器用でもずっと夢を捨てずに追いかけてきたいかつい顔のデイムに共感してしまうのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

デイムのデビュー戦が世界戦だったり、一作目でライトヘビー級だったアドニス-コンラン戦がいつの間にかヘビー級になっていたりと、首をかしげる場面もあるが、それでも極限まで高められた男たちの精神と肉体が激突するクライマックスは、瞬きを忘れるほどエキサイティングだった。

監督     マイケル・B・ジョーダン
出演     マイケル・B・ジョーダン/テッサ・トンプソン/ ジョナサン・メジャース/ウッド・ハリス/ミラ・デイビス=ケント/フロリアンムンテアヌ/フィリシア・ラシャド
ナンバー     97
オススメ度     ★★★


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