こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウーマン・トーキング 私たちの選択

目覚めると太ももにアザがある。股間から出血している。何が起きたのかは覚えていない。だが強烈な不快感は残っている。物語は、女の権利が著しく制限されたコミュニティの反乱を描く。嫌なことをされたのに、それが性的暴行だとは認識できなかった。女はそういうものと男たちに言いくるめられてきた。母も祖母も代々同じような扱いを受け、口をつぐんできた。なにより、その行為の結果自分が存在しているという負い目が彼女たちの口を重くし、決心を鈍らせる。なかったことにするか。理不尽と闘うか。赦して立ち去るか。選択を迫られた女たちは何時間も議論を続ける。警察も行政も介入してこない。テクノロジーも拒否している。なにより女たちは読み書きができない。こんな世界が21世紀にまで存在していたことが驚きだった。

前近代的な文化と信仰を守る村でレイプ事件の犯人が明らかになる。女たちは男たちが村を留守にしている間に集会を開き今後の対策を練るが、主戦派と穏健派に分かれる。

男は暴力と恐怖で女たちを支配している。女の中にも恭順する者がいて、抵抗する者と意見が対立している。その過程で紐解かれていく、このコミュニティにおける男尊女卑の歴史。男でただ一人、書記として参加を許されたオーガストはすでに男社会から疎外されている。女たちが赤裸々に語る自らの被害の実態は、非常に居心地の悪い思いにさせられる。ただ、地図も読めず方角も知らない女たちが「自由」の概念を理解できたのだろうか。できたとしても、それは年老いた労働馬が野に放たれる程度の認識のはず。他にも協議中に読書経験がないとは思えないほど高度な単語が出てきたりする。そのあたりもう少しリアリティを持たせてほしかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画はノンフィクションの原作をもとにしているという触れ込みだ。この作品の舞台が「実は2010年の南米某国」だったとラストシーンで種明かしする構成だったならば、予備知識なしに見た人は往年のM・ナイト・シャマラン映画ぐらいの強烈なインパクトを受けたはずだ。

監督     サラ・ポーリー
出演     ルーニー・マーラ/クレア・フォイ/ジェシー・バックリー/ジュディス・アイビ/シーラ・マッカーシー/オーガスト・ウィンター/ベン・ウィショー/フランシス・マクドーマンド
ナンバー     106
オススメ度     ★★*


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