AI暴走の脅威から人間を守るため彼らを排除する社会と、AIの “人格”を認め人間と共存する社会。ふたつの価値観に分断された世界で、人間はまた性懲りもなく戦争を始める。物語は、AIを敵視する米国のスパイがAI容認国の最高技術者の暗殺を謀るうちに本当の人間性とは何かを知り葛藤する姿を描く。AI容認国では統一規格で作られた大量生産型のロボットが警察を務めている一方、人間そっくりの外見の上、理性や感情といった “心” をプログラムされ、一体一体個性を持つ模造人間がいる。人々は彼らと信頼、友情、愛情で結ばれ、調和の取れた暮らしを営んでいる。そんな平和な村を最新兵器で武装した兵士と超巨大戦車で蹂躙するシーンは、20世紀末に流行したベトナム反戦映画群を彷彿させる。自走自爆ロボットの造形がユニークだった。
天才AI技術者・ニルマータを捜すために潜入捜査をしているテイラーは、重要人物・マヤの夫となってAI容認エリアで暮らしていたが、隠棲するコテージを米軍に急襲される。
敵と知りつつマヤを愛してしまったテイラー。妊娠中の彼女が消息を絶つと、新たなニルマータ捜索作戦に参加、その過程で女の子の外見をした模造人間を見つける。テイラーはそれにアルフィーと名付けて行動を共にする。アルフィーは “精神的” にも成長過程で、まだ自らの存在理由や能力の “正しい” 使い方を知らない。テイラーは命の危機にさらされながらも、アルフィーにひとつずつ人間らしい振る舞いを教育していく。テイラーが見せる180度の反転は、今やAIのほうが知的存在としてのよりまっとうではないかと問いかける。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
AIは「ロボット三原則」を守り合理的で慈悲深い判断をすると信じるべきか、その合理的判断ゆえに人間を攻撃するかもしれないと恐れるべきか。核爆発が人為ミスとしても、それを止めなければやはりAIは信用できない。結局堂々巡りの議論になるが、一度AIが実権を握ると人類は間違いなく滅亡すると、ネアンデルタール人の逸話は教えてくれる。
監督 ギャレス・エドワーズ
出演 ジョン・デビッド・ワシントン/ジェンマ・チャン/渡辺謙/スタージル・シンプソン/マデリン・ユナ・ボイルズ/アリソン・ジャネイ/アマル・チャーダ=パテル
ナンバー 193
オススメ度 ★★★