こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ふたりのマエストロ

父と同じ道に進んだ以上、父は乗り越えなければいけない壁。息子が同じ道を志し実績を積めば、息子は絶対に負けられないライバル。物語は、あまり仲の良くない指揮者父子がトラブルと葛藤を経てお互いを理解しようとする姿を描く。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの息子と、過去の栄光にひたりつつも最後にもう一花咲かせたい父。一応顔を合わせたときは大人としての節度を保っているものの内心は居心地が悪い。さらに第三者の重大なミスが彼らの微妙な状況をさらに複雑にする。近しい関係だからこそややこしい、似た者同士だからこそ反発しあう。「おっさん」「おじいちゃん」と呼ばれる年齢になっても意地を張り合っている彼らを見ていると、人間はいくつになっても成熟しない部分があり、だからこそ愛おしいと思えてくる。

息子のドニが高名な賞をもらったことが気に食わないフランソワ。フランソワの元にミラノ・スカラ座からオファーの連絡が入り大喜びするが、それはドニ宛ての間違い電話だった。

スカラ座責任者から呼び出されたドニは直々に指揮の依頼を受けるとともに、フランソワに真実を伝えるように命じられる。だが、すっかりミラノに行く気になっているフランソワを見ているとなかなか言い出せない。フランソワの長年の夢、家族にも報告してしまっている。糠喜びに終わらせるのが気の毒で、いくら気の合わない父といっても口に出せない。仕方なく母を通じて遠回しに誤解を解くドニ。面倒くさい役割を引き受けた母を演じたミウミウの貫禄十分な女っぷりは、アーティストらしく自分勝手な父子2人よりも圧倒的な存在感を放っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ミラノ行きが迫るドニは恋人や息子との仲を見直す。フランソワとも長年の澱を吐き出しあうシーンとともに、気持ちはきちんと言葉にしないと相手には伝わらないと訴える。ただ、指揮者が2人いたら演奏者は混乱するはず。まあ、ドニの心の中でフランソワの思いを吸収したことの象徴としての映像なのだろうが、誤解する人もいるのではないだろうか。

監督     ブリュノ・シッシュ
出演     イバン・アタル/ピエール・アルディティ/ミュウ=ミュウ/キャロライン・アングラード/パスカル・アルビロ/ニルス・オトナン=ジラール
ナンバー     153
オススメ度     ★★★


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