こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TALK TO ME トーク・トゥ・ミー

イムリミットは90秒、それ以上憑依され続けると霊に肉体を乗っ取られる。物語は、降霊会に参加した高校生たちがたどる悲劇を追う。手の形をしたオブジェを握り呪文を唱えると死者の霊が体内に入ってくる。目を剥き体をエビ反らせ口から泡を吹きながらも、一度生死のはざまを越えるスリルと解放感を覚えると、若者たちは次第に大胆になっていく。安らかな死や納得できる死を迎えられた者の魂はあの世に行くが、悲惨な死や未練を残して死んだ者は魂を悪霊に変えこの世にとどまる。それを知らずに興味本位とその場のノリで危険な行為に突き進む若者の未熟さと無鉄砲さは、SNSが発達した時代でも変わらない。心配性の親世代に反抗しても、グレて犯罪行為に走ったりせず一般的な良識は持っている。そんな、現代の高校生気質がリアルに再現されていた。

友人が主催する降霊会の被験者になったミアは特異な感覚に興奮する。親友・ジェイドの弟・ライリーも憑依体験に志願するが、彼に憑依したのはミアの母の霊だった。

まだ子供ということで、ライリーの制限時間は50秒に設定されている、母の霊ともっと話したいミアは制限時間を過ぎても除霊させない。その結果、ライリーは激しい自傷行為を繰り返し、心も体もボロボロになってしまう。ミアも除霊したはずの女の霊に付きまとわれ、幻覚に悩まされるようになる。彼らの異常な症状は呼び出した霊の邪念によるものなのか、90秒規制を破ったから起きたのかは不明だ。ただ、死者の思いを弄ぶのは慎むべきとわかっていてもやってしまうのが人間の弱さ。もっと恐ろしい目に遭うまで、自分の命が奪われるまで何度も試す。好奇心は時に災厄を招くのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

病院に運ばれたヘイリーは覚醒すると手が付けられなくなり、ミアの妄想もエスカレートする。もはや生きた人間では解決できない。さらに死者との交信を増やして解決策を図ろうとするが、悪循環を繰り返すだけ。米国製ホラーほど血なまぐさくないが、恐怖と不安が心の隙間に忍び寄るような演出が冴えていた。

監督     ダニー・フィリッポウ/マイケル・フィリッポウ
出演     ソフィー・ワイルド/アレクサンドラ・ジェンセン/ジョー・バード/オーティス・ダンジ/ミランダ・オットー/ゾーイ・テラケス/マーカス・ジョンソン
ナンバー     233
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://gaga.ne.jp/talktome/