こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シアター・キャンプ

子供たちの個性と感性を伸ばし、演劇を通じて人間的な豊かさを身に着けさせるキャンプ。だが、長年運営に携わってきたプロデューサーが倒れるとたちまち資金不足に陥る。物語は、子供たちだけで演じるミュージカルのオーディションから本番までに繰り広げられる人間模様を描く。プロデューサーを継いだ息子はビジネスの手法を取り入れ合理化を図ろうとするが現場スタッフはよそよそしい。子供たちの心をつかもうとジョークを飛ばしたりするがスベりまくる。孤軍奮闘する中で、やがて母の思いを少しずつ理解し子供たちの夢を応援するようになる。子供たちだけでなく大人たちもまた危機を克服する中で成長していく過程が、リアルな感情に満ちたノンフィクションタッチの映像で再現されていた。ストレートプレイに対してゲイプレイという素人ぶりには笑えた。

夏休み恒例のシアターキャンプに二十数人の子供たちが集まり、それぞれ歌・演技・衣装・理論などを学ぶ。今年のテーマは急病で倒れたキャンプの創設者・ジョーンの半生だった。

子供たちは皆プロ志望、芸達者で身体能力の高い少年少女ばかり。肥満気味の巨漢まで軽やかにステップを踏み高らかに朗唱する。指導する大人たちも、一流にはなれなかったがそれなりの修練を積んだ熟練の経験者。慣れない集団生活の中、自己主張がぶつかり合い納得いくまで話し合う。大人だけでなく子供たちもしっかりとした自分の意見を持ち、まったく遠慮することなく発言する。そのあたり、多種多様な人種年齢性的指向バックグラウンドを持つ米国で存在感を示すためには多少のハッタリも必要であると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ジョーンの息子・トロイはキャンプの財政立て直しのため債権者と交渉したりするが、現実的に行き詰まり、差し押さえのために作業員が稽古場を解体し始めるなど、もはや公演自体も危ぶまれる。母が愛したキャンプに愛着を持ち始めたトロイが、文字通り体を張った後、一発逆転のアイデアをひねり出すなど、いい人に変わっていくのも心地よい。

監督     モリー・ゴードン/ニック・リーバーマン
出演     ノア・ガルビン/モリー・ゴードン/ベン・プラット/ジミー・タトロ/パティ・ハリソン/アヨ・エデビリ/オーウェン・シール/キャロライン・アーロン/エイミー・セダリス
ナンバー     186
オススメ度     ★★★


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