こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・キラー

ターゲットが泊まるホテルの対面にある小さな部屋で息を潜めて待つ。一睡もせず夜を明かし、午前中の短い時間だけ外に出て、また監視を続ける。ひたすら目立たぬように気配を消しその時に備える。物語は、単独行動をする殺し屋の孤独を描く。任務中は気軽に言葉を交わせるような相手はいない。自問自答を繰り返し、手順に間違いないかを確認するばかり。誰も手を貸してくれない。逃げ回るのは敵に時間を与えるだけ。愛する者を傷つけられた男は、むしろ組織と闘う選択をする。研ぎ澄まされた精神と一片のぜい肉もない鍛え上げられた肉体、たんぱく質を摂取するためにマクドハンバーガーを買ってバンズを捨て具だけを食べる姿には奇妙な共感を覚えた。やっぱりグルテンフリーはコンディショニングには欠かせないのだ。

パリで暗殺に失敗した男はドミニカの隠れ家に戻るが、すでに荒らされていた上に恋人の姿もない。恋人が拷問を受けながらも自力で脱出したと知った男は傷つけた奴らに復讐を誓う。

仲介人の弁護士から襲撃の実行犯とクライアントの情報を得た男は、ひとりまたひとりと殺すべき相手を見つけては確実に銃弾をぶち込んでいく。巧みに身分を偽装し街や風景に溶け込み証拠は一切残さない。彼の卓越した能力を知っている組織の事務方は死神に睨まれたようにあっさりと観念し口を開く。唯一格闘経験豊富なフロリダのチンピラが猛犬と共に男を窮地に追い詰めていくシーンは、生身の肉体が激突する圧倒的な暴力の熱量が沸騰し、静かだった映像が一気に加速する。もう少し明るいところだったら肉弾戦のディテールが楽しめたのだが。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

確かにミスを犯した。だがすぐ口封じに動く組織は許せない。男の心には、今まで忠誠を誓ってきたのにあっさり切り捨てられた怒りが充満したはず。そして、先制攻撃を受けた以上は、できるだけすぐに反撃に転じなければならない。狩られる側が狩る側に立場を変えてこそ窮地を切り抜けられる。追い詰められた時は即断即決で行動せよとこの作品は教えてくれる。

監督     デビッド・フィンチャー
出演     マイケル・ファスベンダー/アーリス・ハワード/チャールズ・パーネル/ガブリエル・ポランコ/ケリー・オマリー/ティルダ・スウィントン
ナンバー     196
オススメ度     ★★*


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