こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォンカとチョコレート工場のはじまり 

カネはない。泊まるところもない。だが、“ステキなことは全部夢から始まる” という母の言葉を座右の銘にしている青年は、未来を信じてチョコレートを作り続ける。物語は、世界中で修業を積んできたお菓子職人が自分の店と工場をオープンさせるまでを描く。騙されて奴隷契約を結んでしまった。同じ境遇の人々は絶望の中であきらめている。ところが、どんな時でも希望を持ち続ける彼は知恵と行動力で苦境をチャンスに変えていく。不幸や不遇に見舞われてもいつもポジティブな主人公をティモシー・シャラメが生き生きと演じ、仲間に生きる勇気を与えていく過程はファンタスティック。その姿はまがうことなき好青年で、ジョニデが演じたひねくれた皮肉屋の大富豪とは大違いだ。何がきっかけで変人になったのか知りたくなった。

魔法のスイーツで世界中を幸せにしようと街にやってきたウォンカだったが、インチキ宿屋に身分を拘束された上、お菓子業界を牛耳る組合と汚職警察署長から商売の邪魔をされる。

ウンパルンパのカカオと秘伝の配合で、ウォンカの作ったチョコレートを食べた人々は気分が高揚するだけでなく肉体まで浮遊する。スイーツの誘惑に負けつい口にしてしまうと、カロリー過剰摂取という罪悪感などすぐに吹き飛び至福の瞬間が訪れるのだ。その感動をヴィジュアル化した歌とダンスは、ミュージカルの醍醐味のみならずスイーツがもたらす恍惚感までカラフルに再現する。もう少し、あと少し、この幸福に浸っていたいと思わせる、とろけるように甘い映像だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ウォンカはヌードルら5人に助けられ、ゲリラ営業で自作のチョコレートを売りついに自前の店を持つが、組合の営業妨害と警察署長の徹底的な取り締まりで撤退を余儀なくされる。失意のうちに町を去るが、約束が果たされなかったと知ると反撃の狼煙を上げるウォンカ。このあたりの展開は目まぐるしいが、一緒に戦ってくれる仲間との友情と信頼こそが運命を切り開き人間を成長させるというメッセージは明確だった。

監督     ポール・キング
出演     ティモシー・シャラメ/ヒュー・グラント/キャラー・レイン/キーガン=マイケル・キー/パターソン・ジョセフ/サリー・ホーキンス/ローワン・アトキンソン/ジム・カーター/オリビア・コールマン/トム・デイビス
ナンバー     221
オススメ度     ★★★★


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/wonka/