こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コンクリート・ユートピア

世界は崩壊してしまった。生き残った人々は、自分たちを守るためにコミュニティを作り部外者を徹底的に排除する。物語は、天変地異であらゆる建築物が倒壊した中、奇跡的に1棟だけ無事だった高層アパートに住む住民たちの、エゴを丸出しのサバイバルを描く。避難してきた非居住者を締め出した。新しいリーダーの元、全員参加の民主主義的な話し合いがもたれた。限りある食料・物資は貢献度に応じた分配。住民たちはアパートの周りをバリケードで固め、男たちは調達隊を組織し付近の商店を荒らしまわる。いつしか顔を知らない者は敵という認識が共有され、先鋭化したリーダーに住民たちは熱狂し始める。難民・格差・貧困・そして不寛容。あらゆる不平等が凝縮されたこの小さな集団は混迷する21世紀を象徴していた。

地震で外部との連絡は一切断たれ孤立したアパートの住人たちはヨンタクを代表に選出し、部外者を極寒の中に追い出す。住民のミンソンはヨンタクに心酔するが妻のミンファは違和感を覚える。

助け合いの精神があるのは最初のうちだけ。日が経ち、救援はこないとわかり、自力で生きなければならないと理解した住民たちが棒切れなどを手に “敵と味方” の線引きをする。頼りなかったヨンタクが徐々に権力に目覚めてリーダーシップを発揮しだすと躊躇していた住民たちも部外者に対して冷酷になっていく。そして、密かに部外者を匿っていた住民に裏切り者の烙印を押す。もはや何が正義なのかは定義できない。勝者もしくは多数派が正義という歪んだ競争社会の原理が機能した結果を住民たちは示していく。外部の生存者が「あのアパートの住民は人を食う」と噂して接触を避けるあたり、協調性のない者は取り残されると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ひとりの少女の出現でコミュニティに不穏な空気が流れ始める。外部でも反アパート集団が組織され反撃の機をうかがっている。弱肉強食ではない、非常時でも良心や善意といった人間の理性や感情を失わない者だけが終末を生き延びるとこの作品は教えてくれる。

監督     オム・テファ
出演     イ・ビョンホン/パク・ソジュン/パク・ボヨン/キム・ソニョン/パク・ジフ/キム・ドユン
ナンバー     2
オススメ度     ★★★★


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