こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ある閉ざされた雪の山荘で

仲間だけれどもライバル。ライバルだけれども助け合わなければならない。だが、ひとりまたひとりと脱落者が出るうちにお互いが誰を信じていいのかわからなくなる。物語は、オーディションの名目で人里離れた別荘に隔離された7人の俳優たちが見せる人間模様を描く。結果だけがものを言う世界、他人を蹴落としてでも役を勝ち取りたい。一方で迫りくる殺人犯の影におびえながらも自分に疑いがかからないように高速で頭を回転させなければならない。でもこれはオーディションの設定のはず。虚実皮膜の間で葛藤する俳優たちの演劇に対する情熱がリアルに再現されていた。たとえ演技であってもそこに宿る喜怒哀楽は真実でなければならない。なのに、野心や嫉妬、不安や疑心暗鬼に襲われ本性をあらわにしていく過程が、人間の真実に迫っていた。

有名劇団員の本田、雨宮、田所、温子、貴子、由梨江に他劇団の久我を加えた7人は4日間の合宿に入る。2日目の朝、温子が姿を消し、殺されたと認定される。

現場にはヘッドフォンと温子のネイルが落ちていた。明らかに絞殺されたと推察される。だがオーディションにおける設定で、本当に殺されたとは誰も思っていない。ところが3日目に由梨江が姿を消し血の付いた花瓶が見つかると、残った5人の心はにわかにざわつく。もしかしたら殺人犯がいるのではないか。設定と見せかけて本当に殺し死体を隠しているのではないか。そんなあほなことはないと思いつつも、少しずつ劇団内の人間関係が明らかになっていくうちに現実味が帯びてくる。このあたりの濁った感情が興味深かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

「役者は嘘をつくのが仕事」という貴子の言葉通り、オーディション自体が壮大な創作の一部で、それを俯瞰すると新作の舞台になるという入れ子構造なのだが、もともとすべてが作り話だったというオチはどんでん返しというよりは壮大な茶番に付き合わされた気がした。雅美は4日間の隠し部屋での監視中、食事やトイレはどうしていたのかと思った時点で気づくべきだった。

監督     飯塚健
出演     重岡大毅/中条あやみ/岡山天音/西野七瀬/堀田真由/戸塚純貴/森川葵/間宮祥太朗
ナンバー     9
オススメ度     ★★*


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