こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジェリー・フィッシュ

otello2013-08-12

ジェリー・フィッシュ

監督 金子修介
出演 大谷澪/花井瑠美/川田広樹/川村亮介/奥菜恵
ナンバー 159
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

話が合わないクラスメイトとは距離を置き、口うるさい両親とはそりが合わない。学校でも家庭でも疎外感を覚えている女子高生は水中で浮遊するクラゲに自身を重ねている。そんな彼女に同類の雰囲気を嗅ぎ取った同級生が接近してくる。まだ自分が何者で、何になれるかも想像できない、今ここで生きている実感さえ乏しい少女たち。やがて彼女たちは、お互いの肉体を確かめることだけが己の存在を証明する手続きであるかのように求め合う。男との愛のないセックスよりも、女同士の思いやりにあふれた抱合。その心地よさを知り、浸ってしまったふたり。繊細で傷つきやすい、でも傷ついても決して壊れない彼女たちの心の彷徨を、逆光を多用したソフトなタッチの映像で再現する。

水族館のクラゲ水槽の前でひとりたたずむ夕紀は、叶子から突然キスされる。その後、バス停で、図書館で、ふたりは時間さえあれば唇を重ね淋しさを埋め合わせていく。ある日、叶子が男子に告白され、付き合いだしたせいでふたりの間に微妙な隙間風が吹き始める。

夕紀はおとなしそうな外見とは裏腹に、セックスのなんたるかを知ろうとバイト先のDVD店店長と関係を持っていた。だが、彼とでは何も満たされなかった。美人で溌剌とした叶子は、ボーイフレンドに抱かれていても表情は上の空。ふたりとも、イクことしか頭にない男とのセックスでは空疎な後味しか得られなかったのだろう。女同士だからこそ感じるポイントが分かっている安心感が、更にふたりの距離を縮めていく。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

心も体も許しあったはずのふたり、それでも話せない秘密がある。夕紀は叶子が中学時代に中絶した過去を叶子の口からきけなかっと苛立ち、一方でDVD店店長との情事は黙っている。このあたり、どこか相手に対して優位に立ちたいという打算が見え隠れする。友情を煮詰めて肉体関係に発展させたのに、やっぱりそれは探していたものではなかった。抑制された感情に、人生に対する彼女たちの諦観がにじみ出ていた。

オススメ度 ★★*

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