こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

FORMA

otello2014-10-13

FORMA

監督 坂本あゆみ
出演 松岡恵望子/梅野渚/ノゾエ征爾/光石研/仁志原了
ナンバー 239
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

固定カメラに収められた異様に長いショットの連続は退屈を催す寸前まで動きが抑制されている。メリハリのない日常的な会話をとらえた映像は色彩も陰影も乏しく、なかなか物語は進行しない。典型的な素人監督の手による自己満足作品、そんな感想が胸によぎりため息をついていたが、ヒロインのドス黒い思いが表面化すると一転、静けさが強烈な伏線となって浮かび上がってくる。言葉の端々に潜むトゲ、行為の裏に仕込まれた毒、笑顔の下に隠された周到な復讐が牙をむく時、事態はあまりにも意外な方向に舵を取る。女の陰湿さとわがまま、父と娘の葛藤、さらに絡み合う過去と現在と異なる視点が見事なまでのミステリーに昇華されていた。

高校時代の同級生・由香里と再会した綾子は、彼女を自分の会社に入社させる。だが、仕事ができない由香里に綾子は苛立ちはじめ、徐々に彼女に対して冷たい態度をとるようになる。

由香里の婚約者に彼女の悪評を吹き込んだり、父に“使えない”由香里の愚痴を垂れる綾子。由香里も綾子をウザいと感じ、折角世話してもらった働き口をやめると言い出す。その間、“テクニック”と呼べるような撮影法は一切採用せず、ただただレンズは対象に向けられたまま。それでも、綾子の家での由香里の居心地の悪さ、父の戸惑い、ビデオ売り場での綾子など、登場人物が見せる雰囲気の一瞬の変化が鮮明な印象を残す。その上で、OL同士の単なるイジメでは片付けられない不穏な空気が漂い始め綾子の本心が垣間見えたかと思うと、見知らぬ男が突然現れてわけのわからないことを主張し、混乱に拍車をかける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

なぜこんな状況になったのか、綾子の目的はいったい何なのか、由香里の罰せられるべき女なのか。後半は由香里の立場から、彼女の本性をあからさまにしていく。平板な語り口とは対照的な大胆な構成、綿密に計算され仄めかされたセリフが収斂する先にある衝撃の真実。色鮮やかに再生されたビデオテープに人間の愚かさと身勝手さが凝縮されていた。

オススメ度 ★★★*

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