闘争、革命、スローガン。国家と共産党に従っていればつつましいながらも暮らしていけた。息子を亡くした喪失感も時が癒してくれた。新しく迎えた養子とはうまくいかなかったけれど、最後には納得した。そして、振り返ったとき幸せな人生だったと思えるのは、やっぱり夫婦仲がよかったから。物語は、1980年代から2010年代にかけて、中国の開放政策と近代化の波に翻弄されながらも生き抜いた小市民の半生を追う。狭く濃い人間関係の中で生きていくのは窮屈ながらもそれなりの安心感があった。自由に稼げるようになると取り残されるような気分になった。若い世代が世界に飛び出すようになると寂しさを感じるようになった。それでも希望を失わなかったのは支え合ったから。何よりも大切なのは家族、国や体制が違っても普遍的な価値観が共感を呼ぶ。
ヤオジュンは同僚のインミンと義兄弟の契りを結び、同じ日に生まれたお互いの息子たちも義兄弟にする。ある日、ヤオジュンの息子・シンが、インミンの息子・ハオと遊水池で遊泳中に溺死する。
ヤオジュンの妻・リーユンは過去に2人目を妊娠したが中絶、赤ちゃんを産めない体になっている。ひとりっ子政策の厳しい監視の下、泣く泣く手術を受けたリーユンがのちに英雄として工員たちの前で表彰される。人民として指導部に従わなければならない、でも心は我が子を奪われた哀しみに千々に乱れている。そんな複雑な気持ちを抱えてステージに立つリーユンの姿が切なかった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
映画は、現在・過去・未来を脈絡なく行き来し、どのエピソードがどこにつながっているのかにわかりづ非常らい。彼らと同じ時代を生き抜いた中国人ならば、服装や電子機器などでだいたいいつごろなのか見当がつくのかもしれないが、外国人にそれを見分けるのは至難の業。わざわざこんなに時制をシャッフルしてわかりにくく編集する意味があるのだろうか。また、1ショットが長く、じっくりと画作りをしているのはわかるのだが、この程度の内容ならば2時間にまとめられたはずだ。
監督 ワン・シャオシュアイ
出演 ワン・ジンチュン/ヨン・メイ/アイ・リーヤー/ー チー・シー/ワン・ユエン/ドゥー・ジャン
ナンバー 82
オススメ度 ★★*