こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ライトハウス

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罠に落ちたまま身動きが取れなくなった巨人が悲嘆にくれてうめき声をあげている。濃い霧、深い闇、彼方から聞こえてくる霧笛はそんなシチュエーションを想像させるほど不気味で不快だ。そしてライティングにこだわった映像は、主人公が目の当たりにする死の穢れを体感させてくれる。物語は、孤島の灯台に赴任した2人の男の葛藤を描く。老人は権力を振りかざし若者を奴隷のごとくこき使う。若者の精神は徐々に蝕まれていくが、夜な夜な灯室にこもる老人はいつまでも意気軒高。ほどなく幻覚に悩まされるようになった若者は、老人への憎しみを高ぶらせていく。だが老人にとってそんな変化は想定内、人事権を振りかざしては若者を押さえつけていく。格差の底辺のごとき場所、逃げ場がないブラック職場でのパワハラは現代にも通じていた。

新人のウィンズローはベテラン灯台守のトーマスからきつい肉体労働をすべて押し付けられる。トーマスは、灯室にだけは絶対にウィンズローを入れず、怪しげなふるまいを見せる。

4週間の任務、ウィンズローは息が詰まる2人だけの世界に慣れるべく懸命に努力する。トーマスは気分の浮き沈みが激しく、いつも顔色を窺っていなければならない。それでもなんとか耐え忍び、明日は離任という最後の夜になって、ウィンズローはやっと禁酒の誓いを破る。酒が入った2人は陽気になり仲良く歌ったり踊ったりする。その姿を見ていると、本当はお互いに認め合っている部分があって少しは友情も芽生えているのかと思わせる。同性愛の方向に振らなかったのは賢明な選択だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが大嵐が来襲、迎えの視察船は現れない。無期限の任務延期、食料は乏しいが酒は大量にある。トーマスの物言いはますます芝居がかりウィンズローを追い詰めていく。ストレスばかりか性欲もたまっていくウィンズローは打ち上げられた人魚を夢想する。もはや現実と妄想の境界はあいまいになり、誰が正気なのかもわからない。繊細なグラスアートのようなレンズだけが真実を知っているようだった。

監督  ロバート・エガース
出演  ロバート・パティンソン/ウィレム・デフォー
ナンバー  126
オススメ度  ★★*


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