エネルギー問題を解決するためか? 人類の進歩のためか? それとも戦争に勝つためか? 物語は、第二次世界大戦末期の日本で原爆開発に携わった若き科学者の葛藤を追う。資金も物資も人材も乏しいなか、実験は安全に対する配慮がまったくない研究室で行われている。計算し、設計し、機械を組み立てるがなかなか思い通りに機能しない。それでも自分たちがやっていることの価値を信じて昼夜を問わず研究と実験に勤しむ若者たち。空襲はまだ一度もない。だがいつ攻撃目標にされるかわからない。そして、身近な人が次々と戦場に駆り出されていく。科学者というだけで銃を手にせずに済んでいる研究員のひとりが “徴兵を免れてほくそ笑んでいる” と、彼らの本心を代弁するシーンが、自由にモノが言えなかった時代の窮屈さを象徴していた。
ウラン235を濃縮するために遠心分離機の試作を重ねる京大研究室の修の元に、軍務についている弟の裕之が休暇で戻ってくる。裕之は死を覚悟しているものの、内心不安に脅えていた。
陶芸家からウランを分けてもらう修。海軍からの支給はなくわずかな量で実験を繰り返さなければならない。そのあたり、核分裂を起こすための仕組みが丁寧に解説されていて、彼らが何を目指しているのかが非常にわかりやすかった。それにしても原爆開発チームは教授・研究員を含めて総勢8人、理論を理解していてもこの程度の人数では実用化が到底無理なのは、彼らも知っているはず。優秀な若者を戦場に行かせたくない教授の気持ちが切なかった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
広島が攻撃され開発競争に負けたと知った京大チームは、がれきの山となった広島に乗り込んで試料を集める。その際、彼らは山積みにした遺体を焼却したりするが、民間人が勝手に火葬などしていいのだろうか。その後も、京都に3発目の原爆が落とされるという噂を信じた修が、確かな情報もまともな計画もないまま比叡山に登り、投下から爆発までの過程を観測しようとする。志も映像の質も高いのだが、腑に落ちない点も多かった。
監督 黒崎博
出演 柳楽優弥/有村架純/三浦春馬/イッセー尾形/ 山本晋也/國村隼/田中裕子
ナンバー 142
オススメ度 ★★*
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