倒すべき相手はかつて同じ目標を目指した指名手配犯。だが、誓いによって縛られた賢者は彼を攻撃できない。物語は、魔法界のリーダーとなって人間に害をなそうとする男の暴走を阻止する魔法使いたちの戦いを描く。聖獣の赤ちゃんだけがリーダーの適性を知っている。赤ちゃんさえ操れば権力が手に入る。扇動と監視、まるで全体主義が支配する街で繰り広げられる虚々実々の駆け引きと、魔法というエネルギー波を激突させる決闘。暴力とは無縁だった若者は、否応なく戦いに巻き込まれるが、そこでも他者を傷つけることなく問題を解決しようと心がける。サソリ状の魔法動物とシンクロしたダンスには彼の平和主義が象徴されていた。だが、一貫して暗いトーンの映像はそれが理想にすぎないことも暗示している。
グリンデルバルドの陰謀を阻止するために集結したニュートら魔法使いとジェイコブはベルリンに飛びダンブルドアと合流する。テセウスが逮捕・拘束されるが、ニュートは単身彼を救出に向かう。
未来予知ができるグリンデルバルドに対し、無計画作戦で臨むダンブルドアたち。双子の聖獣の片方は奪われたがもう片方を鞄に保護したニュートは、それをグリンデルバルドとの決戦の切り札にしなければならない。同時にダンブルドアとクリーデンスの因縁もあり、相関関係は一層複雑さを増す。ディテールにこだわった映像の洪水に圧倒されるとともに、さまざまなキャラクターの側面が語られるのだ。その情報量の多さと展開の速さはきちんと咀嚼する間を与えてくれず、細密さが増すほどにCG感も強くなる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、ジェンダー平等と人種的・性的多様性といったリベラルに配慮した “いかにも” な設定が鼻についた。この時代、女性や有色人種・同性愛者はもっと生きづらかったはず。魔法界の話といえども、むしろそういった差別があったことをきちんと盛り込むべきではないだろうか。いつの間にかニュートよりもダンブルドアが主人公になっていたのも気にかかる。知名度から考えて仕方ないが。
監督 デビッド・イェーツ
出演 エディ・レッドメイン/ジュード・ロウ/マッツ・ミケルセン/アリソン・スドル/ダン・フォグラー/エズラ・ミラー/ジェシカ・ウィリアムズ/カラム・ターナー/ビクトリア・イエイツ/ウィリアム・ナディラム/キャサリン・ウォーターストン
ナンバー 66
オススメ度 ★★*