こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キングメーカー 大統領を作った男

勝つためには手段を選ばない。有権者対立候補をなだめすかし時に取引を持ち掛ける。どれほど高い理想を掲げていても、権力の座につかなければそれを実現できないのだから。物語は、独裁政権が牛耳る発展途上国の野党議員が出世の階段を駆け上っていく過程を描く。腐敗した世の中を変えようと立候補したが、農民も労働者も目先の利益にしか興味を示さない。選挙参謀となった男は、民衆の支持を得ようとするのではなく、ネガティブキャンペーンや偽情報工作で対抗する。有権者に金品をばらまく独裁者の人気取り作戦を逆手に取る采配には目を見張った。まだまだ近代化には遠かった時代、正直者であろうとするほど損をする “民主主義” がエモーショナルに再現されていた。卵泥棒への対処法で2人の主人公の性格を象徴する手法が含蓄に富んでいる。

野党地方議員候補・ウンボムの政策に共鳴したチャンデは、自ら考案した選挙戦術をウンボムの事務所に売り込みに行く。チャンデは汚れ仕事を一手に引き受けウンボムを当選させる。

政権与党の大統領は国家のスパイ組織を配下に起き、チャンデに対して様々な切り崩し工作を仕掛けてくる。一方で、野党内の権力抗争にも生き残っていかなければならない。清廉な政治家のイメージを守りたいウンボムは、チャンデの暴走を苦々しく思いながらも彼の実績に黙認せざるを得ない。他のスタッフもチャンデの奇策に渋々従っている。そのあたり、韓国社会に張り巡らされた見えない壁に閉じ込められた「北出身者」の悲哀が彼の背中からにじみ出ていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

野党党首に選ばれたウンボムは大統領選挙に立候補の意思を固める。「影」と呼ばれその辣腕ぶりが与野党はじめ政界に知らぬ者がいないほどの実力をつけたチャンデはそろそろ自分も議員として認められたいと思い始めるが、決して表舞台に出ることを許されない。そんなチャンデの姿に、KCIA前部長の姿が重なっていく。権力者の寵愛を受けても、忠誠心を疑われると容赦なく切り捨てられる。その事実がリアルだった。

監督     ビョン・ソンヒョン
出演     ソル・ギョング/イ・ソンギュン/ユ・ジェミョン/チョ・ウジン/パク・イナン/イ・ヘヨン/ユン・ギョンホ
ナンバー     153
オススメ度     ★★★*


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