こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アムステルダム

戦争で体も心も傷ついたけれど、友情と自由を手に入れた。だが、そんな夢のような日々にもやがて終わる時が来る。物語は、殺人容疑者の濡れ衣を着せられた男2人が旧知の女の協力を得て、知恵と勇気と行動力で国際的な陰謀を食い止める過程を追う。空前の繁栄から不況のどん底に突き落とされた時代、経済再建を優先させようと全体主義を信奉する勢力が幅を利かせ始める。先人たちが命がけで勝ち取った権利を自分たちの世代が売り渡していいのか? 疑いを晴らすために人脈をたどるうちに、3人の男女は民主主義が危機に瀕していることを知る。スタイリッシュにまとめられた映像は一方でミステリアスな雰囲気をまとい、大戦直後の欧州の高揚と恐慌期の米国の生きづらさを対照的に描いていた。そして、ポピュリズムに陥った世界はほんの十数年で一変すると訴える。

第一次大戦中、同じ米軍部隊で戦ったバートとハロルドは、負傷して入院中に看護婦のヴァレリーと意気投合、戦後の一時期をアムステルダムで共に過ごす。

バートとハロルドの上官だった将軍の娘の暗殺犯とされた2人は独自調査を開始、トムという富豪の屋敷に軟禁されているヴァレリーと再会する。3人はアムステルダムで交わした誓いを復活させ、助け合いと協力を惜しまない。やがて彼らは将軍の真意を知り、遺志を継ぐ決意をする。このあたり次々と腹に一物抱えた登場人物が現れるが、存在感たっぷりの俳優たちが演じているおかげで上手に交通整理されている。洗練された演出はファシズムを想起させる暴力や血なまぐささとは一線を画し、複雑怪奇な展開をスピーディにまとめていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに将軍と親交のあった退役将校・ギルを巻き込んだ3人は、米英スパイの援護を得てトムたちの計画阻止に動く。ただ、全体的にアクセントに乏しく、3人は自分たちに降りかかる危機を飄々と受け流しているように見える。もっと緊迫感を持たせるとか、危険を楽しむ余裕をコミカルに見せるとか、作品のカラーとなる視点を示してほしかった。

監督     デビッド・O・ラッセル
出演     クリスチャン・ベール/マーゴット・ロビー/ジョン・デビッド・ワシントン/クリス・ロック/アニヤ・テイラー=ジョイ/ゾーイ・サルダ/マイク・マイヤーズ/マイケル・シャノン/アンドレア・ライズボロー/テイラー・スウィフト/ ラミ・マレック/ロバート・デ・ニーロ
ナンバー     202
オススメ度     ★★*


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