こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

警官の血

不正をしているのはわかっている。裏社会とつるんでいるのもバレている。しかし決定的な証拠をつかんでいるわけではない。物語は、抜群の検挙率を誇るが悪い噂の絶えない刑事を内偵する若い刑事の葛藤を描く。ベンツにグッチに高級アパート、刑事の給料では賄えないような暮らしをしている。捜査のための経費があると言い訳をしている。一方で、ネタを取るために犯罪者を泳がして、大物を狙っているふりをするのにも抜かりがない。さまざまな顔を持ち、真実は闇の奥。やがて若い刑事は己の正義に自信が持てなくなっていく。そして明らかになっていく、父の死の真相と警察内部にはびこる負の連鎖。深みにはまればはまるほどいったい誰を追っているのかわからなくなっていく過程は、何も信じられない主人公の混迷をリアルに体感させてくれる。

パク隊長の配下となったミンジェは運転手として一緒に捜査に駆けずり回る日々。時に強引で違法な捜査を続けるパクにミンジェは目を光らせるが、パクはなかなか尻尾をつかませない。

不名誉なレッテルを張られたまま殉職した父を持つミンジェは警察内部では潔癖を貫き、時に同僚に不利になる証言も厭わない。そんな彼の経歴も性格も知り尽くしたパクは、手のひらの上で転がすかのようにミンジェを扱っている。それでもミンジェは少しずつパクの行動パターンを分析しカネの流れをつかむ。さらに麻薬王のカジノや秘密工場を急襲するときに重要な役割を振り当てられるなど、ミンジェはパクの信頼を得ていく。だが、ミンジェはパクが騙されたふりをして逆に自分を見張っているような気がしてならない。片時も心をほぐせないミンジェのプレッシャーが息をのむほどの緊迫感となってスクリーンからあふれていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、断片を集めながら大きな謎を解くミステリーの要素は乏しく、警察内部のさまざまな思惑が交錯するばかりで混迷は増すばかり。職務に対する温度差がそれぞれ違うあたりに人間味を感じるが、まとまりのない展開には興味がそがれた。

監督     イ・ギュマン
出演     チョ・ジヌン/チェ・ウシク/パク・ヒスン/クォン・ユル/パク・ミョンフン
ナンバー     204
オススメ度     ★★


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