こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Winny

刑事に騙されて誓約書を書かされた。検事に脅されて供述書にサインした。プログラム以外に興味のない男は “お上” を疑うことなく身に覚えのない罪を認めてしまう。物語は、ファイル交換ソフトを開発したプログラマーと警察・検察の闘いを描く。天才的な発想力と圧倒的な実行力、おそらく食事や睡眠を削ってキーボードをたたいていたのだろう。彼の心は無垢と表現していいほど邪気はなく、自作のコードを世間に役立てたいと純粋に願っている。だが、どんなに有意義なソフトを作ってもそれを悪用する輩はいる。“ナイフで人が刺されたときナイフを作った人に罪はあるのか” という問いは、この作品の本質を衝いていた。主人公のために数百のネット民が資金援助をする、まだネットが自由と民主主義を発展させるツールと思われていた時代が懐かしい。

映画・ゲーム等を無断コピー・公開し著作権法違反に問われた被疑者たちが一斉逮捕される。彼らが使ったソフト「Winny」の作者・金子も任意の事情聴取を受ける。

金子はなぜ警察の尋問を受けているのか理解できず、やすやすと刑事の罠にはまる。サイバー関連に強い檀は金子の弁護を引き受け、世間は悪意に満ちていて、それは警察官や検察官も同じであるとひとつずつ教えていく。天体やジェット戦闘機・格闘など、あらゆる事象をモニター上に復元する能力は飛びぬけているのに、ナイーブといえるほど生身の人間への関心は薄い。プログラムの話になると饒舌になり、彼なりに正義感も持っている。そんな奇特なキャラを東出昌大が好演、プログラム没入してきた主人公の人生に奥行きを持たせていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

弁護団に秋田という弁護士が加わり、裁判では検察側の主張や証言台に呼ばれた刑事の嘘や矛盾をひとつずつ崩していく。秋田の法廷戦術は巧みで、弁護士としての能力以上に、依頼人の立場に寄り添う姿勢と敬意が、人情を感じさせる。そして出る杭は打たれるがごとき判決。無罪を求めて闘い続けた金子の汚名を雪ぐのは、進歩に貢献する技術を応援することなのだ。

監督     松本優作
出演     東出昌大/三浦貴大/皆川猿時/和田正人/木竜麻生/渡辺いっけい/吉田羊/吹越満/吉岡秀隆
ナンバー     9
オススメ度     ★★★★*


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