こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スクロール

死にたい。死んでしまいたい。心の奥から湧き出る願望を抑えきれなくなり、やがて青年は首にロープを巻き付ける。物語は、パワハラ職場に勤める若者と大学時代の友人だったチャラ男が、同級生の自殺をきっかけに己の生き方と人間関係を見つめ直していく過程を描く。毎日のように上司から暴言を浴びせられていた若者は次第に気力を失いSNSの世界に逃避し、そこで「いいね」してくれた女に胸襟を開いていく。女にだらしないチャラ男は同じ失敗を繰り返すうちに中身がスカスカな自分を自覚していく。彼らがそれぞれにかかわった女たちもまた、幸福な未来に思いをはせながら日常と格闘している。もう夢を語る年齢ではない。でもまだ現実と折り合いをつけるほど大人にはなっていない。そんな、20代の心理がリアルに再現されていた。

主体性を持てず会社勤めしている “僕” は、上司を罵って退社した “私” に興味を持つ。TV局勤務のユウスケは自殺した森からの着信履歴を見つけるが、どうしても森を思い出せない。

ユウスケは “僕” に森について訪ねるが、“僕” にも印象は薄い。どんな奴だったのか。何を話したのか。もしかしたら救えたのではないか。葬儀を取材したユウスケは本格的に森のことを調べ始める。それまで他人に関心をあまり持たなかったユウスケが “僕” を巻き込んで森の人生を掘り起こすのだ。森の死はひとつ間違えれば “僕” の身の上に起きていたこと。相田翔子が、息子を喪った母の無念や怒りを凛とした態度で貫禄十分に表現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、映画は登場人物の表層をなぞるのみで感情にも行動にも全く奥行きがなく、ぬるくてゆる~い内容をスタイリッシュな映像でまとめているだけ。パワハラ自殺がきっかけになっているが、その言葉から想像したにすぎない安易なシチュエーションが展開するばかりで、まったくディテールが伴っていない。そもそも絶望するほど生きたのだろうか。「将来に対する唯ぼんやりした不安」で命を絶った芥川龍之介のほうによほど共感するのだが。。。

監督     清水康彦
出演     北村匠海/中川大志/松岡茉優/古川琴音/水橋研二/MEGUMI/金子ノブアキ/忍成修吾/相田翔子
ナンバー     21
オススメ度     ★★


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