こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

トリとロキタ

嘘がバレている。問い詰められると言葉に詰まり、パニック発作を起こす。時間稼ぎはできても、結局また闇仕事に手を染めるだけ。物語は、ビザが出ないために正規就労できないアフリカからの密入国少女がたどる運命を追う。難民認定された男の子を弟代わりにしてなんとか当局を騙そうとするが、うまくいかない。ブローカーには借金が残っている。偽造ビザを手に入れるにはもっとカネが必要。紹介された仕事は孤独との闘い。信じられるのは弟代わりの男の子だけ。彼もまた少女を姉と慕っている。豊かさを求めて先進国にやってきたはずなのに待っていたのは搾取構造の底辺。その現実を前にして、強制送還を免れるには言いなりになるしかない圧倒的弱者の立場がリアルに再現されていた。今どき “不吉な子” という理由で迫害される文化があるのには驚いた。

ロキタとトリの偽姉弟はドラッグを売りさばいて日銭を稼いでいる。ロキタは家族へ仕送りするために大麻工場の住み込み管理人を引き受け、トリと引き離される。

スマホはSIMを抜かれ、外部とは連絡が取れない。組織の男にしつこく通話を要求するが認めてもらえない。当然外出はできず、狭い工場の中で暮らすことになる。そんなロキタを心配したトリは何とか彼女に会いに行こうとする。このふたりの間の強い絆はどのように生まれたのだろう。男女の仲などでは絶対にない。密航船で起きたなんらかの修羅場を切り抜けてきたのか。メタ情報が一切ない映像からは、肉親以上の愛情で結ばれた関係は想像するしかないが、なかなか具体的なイメージには結びつかなかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ロキタもトリも己の権利を守るための主張がとても強い。いつ身柄を拘束されるかわからない状況で弱みに付け込まれないためには当然だが、世話をしてくれる人間に対しても一切の感謝がない。アジア系ならば一日も早く自由になろうとたとえ違法でも一生懸命働くが、アフリカ人の気質なのか彼らに必死さはない。その挙句に、後先考えない愚行に走る始末。感情を刺激しない悲劇だった。

監督     ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
出演     パブロ・シルズ/ジョエリー・ムブンドゥ/アルバン・ウカイ/ティヒメン・フーファールツ/シャルロット・デ・ブライネ/ナデージュ・エドラオゴ
ナンバー     57
オススメ度     ★★


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