こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

#ミトヤマネ

自分の顔をした他人が身に覚えのない行為をしてその動画をウェブに上げている。たちまちそれは拡散し、世間からは犯罪者のように認識され始める。まるで政府による管理が行き届いていない自由主義陣営を混乱させるために生み出されたようなディープフェイクアプリ、いかにも覇権を握ろうとする強権国家のやりそうなことだ。やっぱり中国製のアプリは信用しない方がいいと訴える。物語は、絶大な人気を誇るインフルエンサーが思わぬネットの陥穽に落ち、大衆に追い詰められていく過程を描く。ロケをしているとたちまちファンに囲まれる。本人は芸能人として生きていく覚悟はないのに、ひと儲けを企む周囲は放っておかない。そして出回った、精巧な加工動画。環境が暴走し居場所がなくなっていくネット社会の恐怖がリアルに再現されていた。

顔だけがミトとすり替えられた動画が大量に出回り、マネージャーは対策を練るが一向に鎮静の気配はない。やがて世間の非難の矛先はミトに向かっていく。

しばらくは活動を自粛し息をひそめるように生活するが、すぐにネット民に居場所を突き止められる。街頭演説でミトを批判する男の論点はいまいち理解できないが、こういう輩が騒動に便乗して的外れな言説を流布させようとするのも十分に予想されることではある。さらに隠れ場所を変更すると押しかけたネット民が暴徒化する始末。21世紀初頭は “自由で開かれた民主主義” の象徴だったインターネットが、今や個人が個人を監視する息苦しい社会へと世界を導いている。彼女たちの受難はプライバシー崩壊の危機はもうすでにすぐ近くまで迫っていると警告する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

安住の地を求めて東京から地元に戻ったミトと妹は、実家のそばに住む顔見知りのおばさんに声を掛けられる。ところが彼女は妹にだけ話しかけミトは目に入らないかのようにふるまう。ミトもあえて口を挟まない。もはやミトはヴァーチャルにだけ生きる幻。ネットから消え、現実でも存在感を失っている。そんな彼女の空虚な生き方が哀しかった。

監督     宮崎大祐
出演     玉城ティナ/湯川ひな/稲葉友/片岡礼子/安達祐実/筒井真理子
ナンバー     157
オススメ度     ★★*


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