こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シチリア・サマー

花火職人として将来のレールが敷かれている少年は家族や人間関係に恵まれ不満なく暮らしている。性的指向ゆえに友人もおらず継父ともうまくいかない少年は日々鬱屈を抱えている。物語は、偶然の事故で知り会ったふたりが友情を深めていくうちに、禁断の関係になっていく過程を描く。人工呼吸で唇を合わせた。その感覚がいつまでも忘れられない。ところが、そんなつもりはまったくないかった花火職人の少年は、いつしか同性愛者の少年に魅力を感じていく。バイクに乗り川べりでじゃれ合い一緒に花火を打ち上げる姿は、仲のいい友達同士にしか見えない。だが、カトリックの教えが厳格な土地、やがて噂が保守的な大人の耳に入ると、ふたりの居場所がなくなっていく。まだまだ性的多様性など認められていない時代、偏見にさらされる少年が受ける暴力が哀しい。

客にバイクを届ける途中不良に絡まれたジャンニはニーノが運転するバイクと接触、失神してしまう。自分の責任としきりに謝るニーノに、後日ジャンニは会いに行く。

ニーノの伯父が経営する採石場で働き始めたジャンニは、仕事終わりにニーノとつるむようになる。十代の普通の少年たちの他愛ない遊びや会話の時間をかけがえのない思い出として美化するのではなく、映像はあくまで写実的。ふたりの感情に深く立ち入ることなく彼らの行為を客観視する。ジャンニの噂を耳にしたニーノの姉が、彼女の幼い息子が性的いたずらをされるのではないかと心配するシーンが、同性愛を巡る問題の根深さを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてニーノの家族が知ることとなり、ふたりは会えなくなる。ニーノの伯父が部下を使ってジャンニを殴り倒すが、ジャンニを毛嫌いしている継父や地元の不良がジャンニに手を貸し介抱する。彼らもまた、同性愛を忌避していてもジャンニ本人を憎んでいるわけではないのだ。ジャンニとニーノを取り巻く人々は本来善人、だが宗教的な背景から未知の価値観を排除してしまう無理解こそが悲劇の根本原因であるとこの作品は訴える。

監督     ジュゼッペ・フィオレッロ
出演     ガブリエーレ・ピッツーロ/サムエーレ・セグレート/シモーナ・マラート/ファブリツィア・サッキ/アントーニオ・デ・マッテオ/エンリコ・ロッカフォルテ
ナンバー     214
オススメ度     ★★★


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